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わが国の開発援助国際金融業務の実施機関における環境配慮ガイドラインの実効性に関する調査研究−フィリピン国におけるインフラ事業を対象事例として−



グループ名 調査研究の概況[pdf273kb]
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代表者氏名 臼井 寛二 さん
URL
助成金額 30万円

研究の概要

2002年12月の助成申込書から
 この研究では、々餾欟力銀行(JBIC)、国際協力事業団(JICA)の経済協力活動に関して、両機関が改定を進めている「環境配慮ガイドライン」の問題点を調査・分析するとともに、具体例として、JICAが開発調査に関与し、JBICの融資によって実施された「サンロケダム事業」および「バタンガス港拡張事業」の2事例を取り上げ、現地関係機関を訪問し、資料収集およびヒアリング調査を実施します。  これらを通じて、ガイドラインの問題点や改善方策の指摘をおこないます。

中間報告

中間報告から
 2003年4月から同年8月にかけて、フィリピン共和国へ渡航し、JBICの融資を受けて実施されたサンロケダムの調査を行ないました。調査に当たっては、関係者(現地NGO、事業者)にヒアリングを実施すると共に、関連資料を収集しました。  NGOの調査については、北部ルソン島で活躍し、サンロケダムの問題を初期段階から行なっているCPA(Cordirella People Alliance)を主な対象として、数回のヒアリングを実施すると共に、同NGOが保有、または発行している資料を収集しました。同NGOは、サンロケダムによって影響を被ると言われている先住民族・イバロイ族の立場を代弁している組織です。現在は、入手した資料、およびヒアリングの結果を整理・分析中です。  事業者の調査については、サンロケパワー社(SRPC)を訪問しました。残念なことに、担当者へのヒアリングは実現しませんでしたが、同社がほぼ毎日行なっているという視察に参加することができました。この視察には、ダムに関心を持つ人々であれば誰でも参加できるというもので、事業の説明責任を果たそうとしている事業者の姿勢が伺えました。今回の調査では、事業者サイドの情報はあまり得られませんでしたが、行政が保有している事業者関連の資料は全て入手しました。これらについても、現在分析中です。  現地調査については、上記の通りです。なお、8月末に帰国し、その後現在までは、国内作業としてJBICのガイドラインについて資料を収集し、分析を行なっているところです。

結果・成果

完了報告から
 本研究では、日本のODAにおいて重要な役割を果たしているJBICを取り上げ、同機関の環境社会ガイドラインの問題点を、制度分析および事例分析によって抽出し、最近の制度改定によって、それらの問題が解決されうるかどうか、その可能性を検証することを目的としました。  分析の方法として、ガイドラインの基となる環境アセスメントの考え方から、特に開発援助の文脈で重要な民主性に注目しました。また、具体的な民主性の検証方法として、適正手続(Due Process)の考え方を用いて分析を行いました。分析は2つの段階に分けて行いました。まず、分析1としてはフィリピン国サンロケ多目的開発事業(SRMP)を取り上げ、適用された参加手続きを地域ごとに分けて、適正手続きの観点から分析を行いました。続く分析2としては、JBICガイドラインを取り上げて、同じく適正手続きの観点から分析を行いました。  上流地域に対しては、直接参加の機会が6回、間接参加の機会が6回となっています。それぞれの参加機会において協議された内容は不明確です。だが、事業が開始された初期から、住民による激しい反対運動が展開されており、住民レベルでの反対運動は現在(2004年7月時点)でも続いています。参加に関しては、地元のNGOや上流ベンゲット州が、上流先住民族とのコンサルテーションが不足しているとしています。決定的なのは、イトゴン市等や地元自治体や住民組織は、事業の早い段階で十分な協議の機会が与えられなかったとしています。そもそも上流地域は、事業による影響範囲と認識されていなかったため、十分な参加機会が与えられず、その保障もされませんでした。このような事から、実施された参加手続は、利害関係人にとって不十分な内容であったといえ、適正手続ではなかったといえます。  下流地域に関しては、95.03〜99.03の間で、直接参加17回、間接参加60回と、上流地域と比較すると桁違いに多い。その理由として、下流地域にはダム建設地があり、誰の目にも疑いのない直接的な影響範囲であることが挙げられます。その内容についてみると、少なくとも自治体レベルでの合意が得られており、地域代表者を対象とする間接参加に関しては、適正なものだったことが伺えます。一方、影響住民の直接参加については、上流地域と比較すると激しい反対運動は生じていないものの、事業者による生計手段(砂金採取)の阻害を撤回するよう求めています(01.09)。また、下流地域の住民に関しては、NGOから別の観点から指摘があります。それは、下流地域は軍隊が駐留していること、地域のリーダーが事業に好意的であること、等の理由により、たとえ自分が事業に反対であっても、反対を表明することは極めて困難であるということです。  分析1の結果をまとめると、上流地域の参加手続きは、事業の初期段階では実施されず、適正な参加を求めていたことから、不適正であるといえます。一方、直接影響範囲である下流地域については、住民に対する参加については、適正かどうかの判断はできませんでした。自治体レベルの間接参加は、初期段階でほとんどの自治体が同意しているため、適正であったといえます。  分析2では、適正手続の要件である参加については、形式的には満たしているといえます。具体的な参加対象となるステークホルダーとして、借入人、プロジェクト事業者、被影響住民、現地NGOなどが想定されています。また、ステークホルダーの属性として、女性や子供、貧困層など、弱い立場への配慮がなされています。特に先住民族に対しては、別項が設けられており、十分な情報提供が与えられた上で、合意をしなければならないとしている。また、分析1で問題とされた、【1】先住民族への配慮や、【2】環境影響の範囲がグレーゾーンである場合の対応、【3】早い段階からのコンサルテーションの確保についても記載があります。こうしたことから、今後の事業で同ガイドラインが遵守されたなら、SRMPで指摘されたような問題は回避されると期待できます。

その他/備考

対外的な発表実績
現在投稿準備中の雑誌 Environmental Impact Assessment Review 今後の展望  今回の調査に充てられた期間は半年と短く、必ずしも、十分な成果を上げられたとは言い難かったです。このことは、筆者自身の能力不足に起因するものであり、基金の支援者に対する責任を感じています。調査の継続については、直接的には考えていないが、時間や予算の確保ができた時点で、今回実現できなかった課題について取り組みたいと考えています。

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