高木基金について助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い

これまでの助成研究・研修

トップページ  > これまでの助成研究・研修 > 助成事例の詳細


個人の被曝量を特定できるストロンチウム-90測定法の確立および乳歯保存・乳歯中のストロンチウム-90測定



グループ名 乳歯保存ネットワーク 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 松井 英介 さん
URL http://www.hahainc.jp/
助成金額 50万円

米国ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ社製LB4200型低バックグラウンドα/β線測定器

測定試料の前処理のために必要な電気炉、ドラフトチャンバー、沈殿濾過装置など

Sr-90測定には、1〜2gの乳歯が必要。前歯だと6本以上、奥歯なら4本以上

研究の概要

2017年12月の助成申込書から
●2011年の東京電力福島第一原発事故は、莫大な量の核分裂生成物を環境中に放出した。その一つである放射性ストロンチウム90(以下Sr90)は、カルシウムと類似の挙動をとって骨や歯牙組織に長期間とどまり白血病等の発症のリスクを高める。 ●かつて大気圏内核実験の際には国内でもSr90の観測態勢があった。しかし福島事故後系統的なSr90測定は一切行われていない。 ●脱落した乳歯中のSr-90濃度と骨の中のそれは同程度であるため、乳歯の測定によりSr90の内部被曝を個人レベルで決定することができる。そこで、私たちは乳歯を集めてSr90の濃度を測定することを「当面」の目標に活動を行ってきた。 ●具体的には、(1)福島県を中心に乳歯収集のネットワークを確立する。(2)スイスで行われている比較的簡便なシュウ酸塩法によるSr90測定法を改良し、高精度で個人の被曝量の特定ができる手法を確立する。(3)測定所を開設する。 ●上記の(2)、(3)の実行組織には、未来型非営利の「株式会社 はは」を設立してあてる。 ●(株)ははには1000名以上の株主の応募があり、出資額が2000万円を超えたので、低バックグラウンドβ線測定器(1500万円)を発注し、近々納入される予定である。測定所の開設場所も決まり、改装工事にかかっている。 ●これまでの乳歯保存ネットワークは、そのまま存続し、 (株)ははと一体となって、引き続き乳歯収集のネットワーク作りをめざす。 ●当面、スイスと同様な方法で測定を開始するとともに、イオン交換法や溶媒抽出法を加えた、より精度の高い処理方法を確立する。 ●ベータ線の内部被ばくの実態を明らかにし、生体影響について科学的に言及する第一歩とする。

中間報告

2018年10月の中間報告から
 福島第一原子力発電所の事故で長期的に懸念されるものに放射性物質を体内に取り込んだときの内部被曝があります。中でもストロンチウム90(Sr90)はカルシウムと同族であるので、骨に沈着し、骨髄腫や白血病など重篤な病気を引き起こす可能性があります。しかし、政府も自治体もSr90を事実上無視し、外部被曝をもたらすセシウムだけを測定しています。  歯は骨と組成が近くSr90が沈着します。そこで、抜け落ちた乳歯中のSr90を測定すればその内部被曝の程度を知ることができ、放射線の影響がより大きな子どもの被曝を調べることにも貢献できます。大気圏内核実験が行われていた時代には、日本も含めて乳歯中のSr90がひろく測定されていましたが、今では世界でもスイスバーゼル州立研究所などで行われているのみです。  私たちの活動は、本来、政府・自治体がすべての被害者を対象に検査すべきSr90内部被曝測定に先鞭を着け、その結果を基に公的機関に必要な措置をさせることを目的としています。  そこで、放射線測定の専門家、医師、歯科医、物理・化学の専門家、東北からの避難者や保養活動家等が2015年から自前のSr90測定所建設を目指して活動してきました。Sr90は壊変時にベータ線しか出さないため、ガンマ線測定のような比較的容易な測定法が使えず、また、Sr90からのベータ線であることを保証するため複雑な化学的処理の設備も必要であり、多額の費用を要します。  しかし強い思いと多くの人々の支えが実を結び、岐阜市の南、田畑の目立つ新興住宅地の一角に測定所が開設されました。日本中にも数少ない低バックグラウンド アルファ/ベータ線測定器が設置され、化学処理用の電気炉、グローブボックス、何種類もの沈殿濾過装置、精密物理天秤などの設備に続いて、薬品やガラス器具などの消耗品もすべて整いました。現在は本測定の前段階として乳歯以外の様々な試料を使い、測定法の確立と改良に取り組んでいます。  一日も早く乳歯の測定に取りかかり、子どもの未来と安心に貢献したいと思います。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故は、膨大な量の核分裂生成物を環境中に放出しました。その中のSr-90はカルシウムとともに骨組織に入り、長期間定着して内部被曝をもたらし、骨腫瘍や白血病、免疫不全などの発症のリスクを高めるおそれがあります。  Sr-90はCs-137などと比べて測定が困難ですが、1950年代からの大気圏内核実験の際には国内でも観測が行われていました。今回の事故は、国内で発生した重大な事故であるにもかかわらず、日本政府や自治体はSr-90の内部被曝について系統的な測定を一切行っていません。  私たちは比較的容易に手に入る乳歯に着目してSr-90の内部被曝測定をすべての子どもに実施することを目標に活動してきました。このために、以下のことを行ってきました。 (1)全国各地に乳歯収集のネットワークを確立する。私たちの要請にこたえて、これまで外国を含め275名の呼びかけ人が名を連ねてくれた。 (2)微弱なβ線を測定するために不可欠な低バックグラウンドβ線測定器(ミリオンキャンベラ社製LB4200)を購入した。またSr-90 測定の前処理としてはスイスで行われている比較的作業安全性の高いシュウ酸塩法を使い、必要な化学処理設備を設け、すべての工程を測定所で行えるようにした。 (3)化学的な前処理からβ線測定まですべて実行できる測定所を開設し、子どもたちの乳歯のSr-90測定を開始した。  私たちの活動成果は、福島第一原子力発電所事故に起因したSr-90による内部被ばくの実態を明らかにし、生体影響について科学的に言及できる第一歩と期待できます。今後は財政的に活動を支えられるように広く働きかけるとともに、多くの乳歯を提供していただき、その結果を基に日本中の子どもたちが公的機関で乳歯の測定を受け、Sr-90による内部被爆の検査を受けられるようにしたいと考えています。私たちの測定の結果を見て、健康に不安を抱いた方に今後の対策などの相談に応じる体制も整えていこうと考えています。

その他/備考


HOME助成応募の方法これまでの助成研究・研修高木基金の取り組みご支援のお願い高木基金について
ENGLISHサイトマップお問い合わせ 個人情報の取り扱い